ヴァンパイア†KISS

デュオは歓声の中、唇をゆっくりと離すと、取り囲むヴァンパイアたちに向き直った。

わたしの手をその右手でしっかりと握り締めながら。

｢……皆も知っているだろうが、私はお前達の主ではない。私にはどうやっても超えられない男がいる。その男は、主であり、皇帝であり、我々ヴァンパイアの王である。そして彼は、この１００年間ずっと眠りながら『ガイア』を護り続けてきた。彼の妻であるエマとともに……｣

広間中のヴァンパイアが顔を見合わせざわめきあった。

｢ウルフ様が生きていらっしゃる……！？｣

｢まさか…人間との闘いに散ったのでは…！｣

エマがふらふらとデュオとわたしの前に歩み出てきた。

その青の瞳はゆらゆらと水面のように揺れ、桃色の唇は小刻みに震えていた。

｢デュオ、教えてください。ウルフは……生きているのですか？｣

祈るような瞳。

デュオはそれにまっすぐに答えるようにエマに向かって微笑んだ。

｢あなたの最愛の人は、生きています。心臓の治療法を見つけたらすぐにでも救出しましょう。『ガイア』の封印を解くのは、あなたとウルフです｣

エマはそれを聞いた途端、両手で顔を覆って床へ伏せた。

｢……ウルフ…！！｣

わたしは小刻みに震えるエマの肩を抱きしめた。

｢エマ……よかったね…！｣

カルロもその横でエイダを抱きしめながら、喜ぶエマを愛おしげに見つめ微笑む。

デュオはそこで全員に聞こえるように声を張り上げた。

｢皆も聞こえたな？お前達の皇帝、ウルフは生きている。私は今、強く美しき伴侶を得た。必ず彼を奪還し、ヴァンパイアの楽園『ガイア』を復活させる！｣

その瞬間。

ヴァンパイアたちの熱気が広間中を突き抜け、月にも届くように空へと舞い上がった。

｢ウルフ様！！エマ様！！｣

｢デュオ様！！カレン様！！｣

歓声の中、わたしは眩しいものを見つめるようにデュオを見上げていた。

デュオ……あなたはやっぱり、ミステリアスな人だ。