ヴァンパイア†KISS
わたしはドアノブにかけていた手を下ろし、その場に立ち尽くした。

「ルシア、どいてくれ。僕は、カルロを目覚めさせたい」

シエルの声だった。

静かになんの抑揚もない声で話すシエル。

シエル……やっぱりあなたは!!

「どうやって?それには、心臓の血を飲ませるしかない。そうすれば、あなたが死ぬわ」

「……それでいい。カルロが甦れば、カレンも父さんも助けることができる。二人を愛する人はいっぱいいる。僕も、それが一番嬉しい」

シエル……!!

わたしがシエルを止めようとドアを開けかけたその時。

かすかに開いたドアの向こうで、ルシアがシエルに抱きつくのが見えた。

ルシアはしがみつくようにシエルの背中に腕を回す。

シエルの横顔が驚きの表情でルシアを見下ろした。

「あなたを愛している人がいないとでも?わたくしが愛している、と言ったら?」

「…ル…シア…?」

シエルはルシアにされるがまま、立ち尽くす。

「わたくしの心臓の血を彼に与えなさい。そうするなら……放してあげる」

「ルシ……」

ルシアは背伸びをすると、何かを言いかけたシエルの唇をその艶やかな唇で塞いだ。

シエルは瞳を開いたまま、身動き一つせず、閉じられたルシアの長いまつ毛を見つめる。



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