ヴァンパイア†KISS
そっと唇を離し、目を細めてシエルを見上げるルシア。

「どうするの?シエル。わたくしが、あなたのためなら命も惜しくないと言っているの。このままじゃ、ウルフを助けに行くこともできないわね」

生まれつきの気品と、気の強さを感じさせるような笑みで微笑む。

シエルは沈黙したまま、ルシアを見下ろしていた。

無表情のシエルは目を細め、唇をきゅっと締めると、太陽のような微笑を宿し、声を出して笑った。

「アハハ…!ルシア、僕もわがままだけど、君も相当だ。言うこと聞かないと離さないなんて、まるで子供だよね」

ルシアはそれを見て肩透かしをくらったようにシエルを離した。

シエルはそのまま腹を抱え、耐え切れないように笑いながらしゃがみこむ。

「シ、シエル!そんなに笑うことないでしょう!?」

ルシアは恥ずかしそうに顔を赤らめると、シエルに背を向けた。

シエルは笑うのをやめ、しゃがんだまま優しい笑顔で言った。

「…ありがとう」

思わず振り向いたルシアを見上げて続ける。

「君はやっぱり愛の強い女性だ。さすが、デュオ兄さんの妹だよ」

「シエル?」

ふわりと汚れのない顔で微笑みながらシエルがつぶやく。

「わかったよ、ルシア。君に死なれたら、デュオ兄さんに怒られるからね」

シエルは立ち上がり、胸に提げている金色の十字架をはずし手にとった。

「母さんと父さんの十字架。これをあなたたちの愛するカルロに託します。どうか、彼に力を貸してあげてください」

ベッドに眠るカルロの首にそっと十字架をかけ、シエルはカルロの金髪の柔らかい髪にそっと触れた。

「ずっと父さんと母さんを護ってくれてありがとう、カルロ」

傍らで、エイダが金色に光る十字架をじっと見つめ、「にゃぁあ」とひと鳴きした。

「行って来るよ、カルロ、ルシア……!」






< 311 / 411 >

この作品をシェア

pagetop