ヴァンパイア†KISS
デュオは空中でバイオレットの瞳を色濃く光らせ、黒マントを剥ぎ取った。

マントは落ちながらその裾を広げ、ちょうどカーラの頭上の視界を塞ぐ。

その瞬間。

茎のうねりが弱まり、その動きを止めた。

デュオは空中で長く伸びた茎を右手の手のひらでしっかりと掴むと、そのまま茎を伝ってカーラに向かって滑り落ちていく。

薔薇の棘が、ボキボキと嫌な音を立てながらデュオの手の中で折れていく。

デュオが手から血が飛び散るのも構わずに下へ降りていくその瞬間。

カーラが剣を持っていないほうの手で落ちてきたマントを払い宙を見上げた。

「……くっ!」

カーラが見上げたその眼前に。

「落ちろ」

デュオの剣の切っ先があった。

ドスッ――――!!

碧眼を見開き、茎が巻きつく剣を手放し倒れていく真っ赤な胸。

ザシュ……!!

背中から倒れるカーラの心臓から抜き取られるデュオの鮮血に染まった剣。

ドッ!!!

目を見開いたまま倒れたカーラの横に、茎の巻きつく彼女の剣がカランと音をたてて転がった。

「…デュ…オ…」

凍りついたような冷たい瞳でカーラを見下ろすデュオに、声をかけることができなかった。

降ろされたデュオの右手からおびただしい血が流れては床へと落ちていった。

そのまま少しだけ立ち尽くしていたデュオは落ちていたマントを拾うと、跪いてカーラの顔にそれを被せた。



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