ヴァンパイア†KISS
「シエルの勝ちだな」

その時、隣にいるデュオが不敵に微笑んで言った。

「デュオ?」

サラがまさにシエルにキスをしようとしたその時。

「ぐぅ……あああああ!」

シエルを羽交い絞めにしている男が痙攣したように体を震わせ崩れ落ちた。

サラが目を見開いて動きを止める。

シエルはそんなサラの額にちゅっとキスをした。

「…な!?」

「好きな人じゃないと、キスしちゃだめだよ」

天使のように微笑むシエルに、意表をつかれた顔で佇むサラ。

シエルがその隙にサラのみぞおちを殴ると、サラはふっと力を失ったようにシエルの胸に倒れこんだ。

そして頭上から落ちてきた解毒剤の小瓶をパシっと受け止め、微笑む。

「速さなら、僕も負けない」

シエルは微笑みながら「デュオ兄さん!」そう言って小瓶をデュオへと投げ渡した。

不思議そうにデュオを見つめるわたしに彼は、

「シエルは奴に掴まれる直前、既に月光の鎖を奴の首に巻きつけていた。その鎖は少しずつ奴の首を絞めていった」

シエル……いつの間にそんなこと!?

月光の鎖なんて全く気付かなかった。

デュオは言いながら小瓶を持ってブルースの方へ歩いていく。

わたしもそれに続きながらシエルの方を振り返った。

シエルは、しゃがみこみ頬杖をつきながらこちらをニコニコと見ていた。

サラはシエルの横で意識を失ったままだ。







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