ヴァンパイア†KISS
加速度を増し燃え広がっていく炎の中、ウルフがゆっくりと起き上がるのが見えた。

「ウルフ……!!」

エマが倒れているウルフを抱き寄せ、涙する。

「…エ…マ…きみ…なの…か?」

よかった……!!

ウルフが甦った喜びとエマの嬉しそうな泣き顔に、ほっとした。

あとはこの炎をかいくぐることができれば、わたしの血でカルロを助けることができる。

そう思った瞬間。

グラリ、とエマが括りつけられていた大きな十字架が、炎を上げながらウルフを抱き起こすエマの上へと倒れていくのがやけにゆっくりと見えていた。

でも、それはほんの一瞬だったと思う。

エマが気付くことなくウルフを見つめているその後ろに、カルロが飛び込んだ。

心臓を突いた胸から血を流し、蒼白な顔をしたカルロは燃え盛る十字架をその小さな背に受け止めた。

「……ぐ……ぁああああ!」

カルロの激しい叫びにエマが振り返る。

瞳が大きく見開かれていく。

「カルロ―――――!!」

エマとわたしは、同時に叫んでいた。

「開きました!!この道は、すぐに消えてしまいます!ウルフ様、エマ様、早く!!」

ルドルフが炎の間に再び細い道を開いた。

「カルロ!!」

ウルフがユラリと立ち上がり炎で燃え上がっていくカルロに手を差し伸べた。

「…行ってください、ウル…フ様、シエルを連れて…私は、もう…」

エマが倒れているシエルを抱き起こし、マリアのような微笑を見せると、一すじの涙がその頬を伝った。

「カルロ、あなたの気持ち、知っていました。……ありがとう」

カルロは、心の底から幸せそうに微笑むと、

「この微笑をくれたのは、エマ様です。あなたがいなければ、私はずっと……微笑むことはないまま死んでいたでしょう…100年前…に。さ…あ…、行ってください!」




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