桜の花が散る頃に
「キャーッ怖いー♡シュート君、ユキを守ってー!」

…ゲームが始まると、コレ。
なーんで俺がアンタを守らなあかんのや。

他の男子から睨まれるし、マジ勘弁してくれ。

絡まれるのが面倒で早めに相手チームを全滅させると、

「かっこいいー♡ゆーきのために頑張ってくれてありがとうー!」

だと。誰がアンタの為に…色々げんなり。

夏実の方も、学が全く使い物にならないくらいの運動音痴だって事を感じさせないくらいの快勝。

「藍泉さん、凄いね!」

「夏実でいーよ!このまま優勝して今日の掃除免除だあ!」

「い、いやー、別にそこまでは…」

向こうは楽しそうだ。
くっそ、次の試合でボコボコにして、汚ったない雑巾投げつけてやる。(学に。)

という事で、5分休憩を挟み最終試合。

ただの体育に本気になる俺と夏実、コートの端で縮こまっている学と、なぜか夏実を睨みつける結城。

ゲームスタートからたった数分後、コートの中は俺と夏実と結城だけになった。

や、結城は逃げ回ってるだけで役に立ちもしないが。

「女子の癖に塩谷と張り合ってる…」

「塩谷ってアレだよな?助っ人でハンドボール部の練習試合出て全敗記録止めたっていう」

「藍泉ちゃん、文武両道とか俺惚れそー」

外野が俺と夏実の話で盛り上がるのが気に入らないのか、結城はつまらなさそうな顔をしている。

…つまんないなら当たって外出りゃいいのに。

「なーによそ見してんのさ!」

俺が目線を外した隙に、肩を狙ってくる夏実。
狡猾な奴め。

辛うじて避けると、避けた先に結城さんが居た。

「バカ、避けろ!」

女が投げたとは思えない程の豪速球が、結城の顔面にぶち当たって、結城が吹っ飛んだ。

「ユキちゃん!!」

「結城さん!!大丈夫!?」

静かに立ち上がった結城の鼻から、血がたらーっと垂れる。

「フハッ結城、鼻血ッ…フッ」

可愛い顔が台無しで、つい吹き出してしまった。
夏実はらしくもなくオロオロしている。

「結城さん、だっけ!?ごめんね!!秋人が避けるとは思わなくてさ!」

「バッカやろ、避けるに決まってるだろ!」

まるで避けた俺が悪いみたいに!
てか誰も悪く無いし!!むしろそこに突っ立ってた結城が悪いだろ…

一連の流れを見ていた結城と仲のいい女子達が、慌てて結城に駆け寄る。

「先生、私達結城さんを保健室に連れてってきまーす!」

どーせサボりたいだけだろーなー…ま、俺には関係無いけど…

「ゲームは中断!先生もついてくから、お前ら自由時間な!」

いや、たかが鼻血。
モデルだかなんだか知らんが心配しすぎ。

とりあえずは、やけに落ち込んでる夏実を慰めなきゃかな…。
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