クールな弁護士の一途な熱情



「ふたりとも用事ですか?」

「えぇ。土曜日に花火大会あるじゃない?そこで友達の出店手伝ってそのままオールで飲み会が毎年の恒例なの」

「私も家族と花火大会行くから。たまには子供と主人に家族サービスしなくちゃ」



花火大会……。

ふたりの言葉に、そういえば駅前に花火大会のポスターが掲示してあったことを思い出す。



そういえば毎年、8月の第2土曜日に花火大会があったっけ。

子供の頃は家族と、中学生からは友達とよく行っていた。



……思えば最後に行ったのは、高校3年生の夏。

静と行って以来、行けてないや。

思い出されるその記憶を押し込めて、ふたりに「わかりました」と頷くと、私は仕事にとりかかった。






12年前、静とふたりで行った花火大会。

慣れない浴衣で精いっぱい着飾って、駅で待ち合わせた。

つないだ手が汗ばむのが恥ずかしくて、緊張して。海岸沿いの道で花火を見ながら、一度だけ短いキスをした。



彼との、最初で最後のキス。

空に上がる花火の明かりに照らされる真っ直ぐな目が、一心にこちらを見つめていたのを今でも覚えている。





「入江」

「わっ」



その日の午後。打ち合わせ中の壇さんのために給湯室でコーヒーを淹れていると、突然声をかけられた。

一瞬で現実に戻されたように振り向くと、給湯室の入り口に静が立っている。


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