クールな弁護士の一途な熱情




翌日から、私は普通を装いいつも通り仕事に励んだ。

静は外出や打ち合わせばかりでまともに顔を合わせることもなく、私も距離を取るようにして過ごす。

合間に森くんと連絡を取り合い、一度ご飯に行ったりして。



そんな日々を10日ほど続け、迎えた8月終わりの金曜日。

18時が過ぎ、今日をもって私のここでのバイトが終了した。



今日までの仕事は全て処理済み。

掃除も普段やらないような細かいところまで済ませたし、やり残したことはないはずだ。


確認を終え荷物をまとめていると、仕事を終えた花村さんが寂しそうに笑う。



「果穂ちゃん、今日で仕事おしまいね」

「はい。お世話になりました」

「果穂!まだいるー!?」



するとそこに、叫びながら駆け込んで来たのは今日も一日外出をしていた壇さんだ。

その手には大きな紙袋が持たれている。



「壇さん!どうしたんですか?今日直帰じゃ……」

「なに言ってるのよ。果穂、仕事最終日でしょ。ダッシュで仕事終わらせて来たわよ」



壇さんがそう言いながら、手にしていた紙袋から取り出したのは、大きな花束。

黄色いリボンがつけられたその花束は、オレンジ色をメインにした花々で彩られている。



「えっ……いいんですか?」

「もちろん。短い間だったけどお疲れ様」



戸惑いながら受け取ると、しっかりとした重みが伝わる。

私のために用意してくれて、間に合うように走って来てくれたんだ。

嬉しくて涙が出そうになるのをぐっとこらえる。


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