トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
「親友って親しい友って書くでしょう?親友は唯一無二の存在でしょ?二人もいるなんてありえないって思わない?」

「あたしにとってエレナも彩乃も大切な親友だよ?」

どちらか一人だけを選ぶことなんてできない。

あたしにとって二人とも大事だから。

「同じ感性とか感覚を持った人たちが親友になれると思うの。私と杉原さんには同じものを感じる。フィーリングが合いそうだって思うの。どう?そう思わない?」

「どうって言われてもちょっと困るよ……」

だって、フィーリングが合うかどうかなんてほとんど話したこともないし分からない。

「私も杉原さんみたいな親友が欲しいな。どうしたらできる?」

「そ、そんなこと言わないで。きっと葛生さんにもできるよ」

「本当に?」

葛生さんは嬉しいことがあったかのようにキラキラと目を輝かせる。

「もちろん!」

「じゃあ、なってくれる?」

「え……?」

嬉しそうに頬を赤らめる葛生さんの言葉の意味がよく分からず首を傾げる。

なってくれるって、何に?親友……に?

だって、まだ今日初めてちゃんと言葉を交わしたばっかりだもん。

ようやく友達っていうスタートラインに立ったばっかりだよ?

一日で親友にはなれないよ。

「それは……」

そう答えた瞬間、授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。

よかった。とホッとして葛生さんに視線を向けると、何故か葛生さんは満足げに微笑んでいた。

えっ。その反応って……。

あ、あたし、まだ何も答えてないよ?

「これから梨沙って呼ぶね。私のことも薫子って呼んでいいから」

葛生さんはそう言って体をもとに戻す。

えっ、ちょっ……。

一方的に話を終わらせると葛生さんに困惑する。

あれっ。葛生さんってこういうタイプの子だったの……?

葛生さんとこうやってちゃんと話したのは今日が初めてだ。

でも、ほんの少し話しただけなのに妙な違和感を感じた。
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