橙色の糸
数日後、俺は目が見えなくなった事により、歩行訓練と点字の学習が始まった。
···のだが、
「あなた!前からお爺さんが来てるわ!左に避けて!!」
「父さん、これは"は"で、これが…濁点だから"ば"って読むんだよ!まぁ、ここに書いてあるんだけどねw」
この2人のありがたい(?)助言によって俺はみるみるうちにほぼ通常通り歩けるようになり、点字もあっという間に覚えた。
「高橋さん凄いですね…!!元々点字とか習ってたんですか?」
「いえ、教えてくださる先生方のおかげですよ。」
まさか「幽霊の妻と息子が教えてくれてるんです。」なんて言えないだろう。そんな事を言ってしまったらおそらく直ぐに精神病棟にぶち込まれてしまう。
「でもこの分なら、一週間後には臨時退院出来そうですね。」
「そうですか、それは…良かったです。」
俺の適応の速さに驚きながらも喜ぶ山口さんの言葉に俺は少し複雑な気持ちになった。
帰ったところで、俺は一人だ。
俊介も、奏恵ももうあの家にはいない。
俺が大好きだったはずのあの家は今ではもうまるで幸せの抜け殻のように感じられた。
山口さんの手を(一応)借りて自分の病室に戻り山口さんが部屋から出ていくと、
「あ〜やっと家に帰れるのね。…あの日ちゃんと鍵閉めたかしら!?ちょっと不安になってきちゃったわ!」
と奏恵の声が聞こえた。
「あの日最後に出たのは俺だろ?大丈夫。ちゃんと閉めてきたよ。」
不安なことがあると髪を弄る癖のある奏恵の仕草を思い出しながら、俺は苦笑して答えた。
「全く、母さんは心配性だよなぁ〜」
「だってホントに心配なんだもの!」
そんな2人の言い争いを聴きながら、俺は家に帰ったあとのことを考えた。
(家に帰ったらまず、何をしようか…掃除か?…2人のサポートがあっても一人で出来るか不安だな。それに、はやく2人がどうしてこうなったのかも調べなきゃだな…)
様々なことが脳裏をよぎり、何から手を付けるべきか考えあぐねていると
「父さん、何ごちゃごちゃ考えてんの?」
「…え?」
「父さんが考えてること、全部口に出てたよww」
思わず口元を手で塞ぐ。そんな俺を見て奏恵がひとしきり笑ったあとにこんな提案をしてくれた。
「それなら、お隣の神無木さんに相談してみたらどう?」
神無木さんは神主をしていて、俺たち家族のこともよく気にかけてくれていた優しいおじさんだ。病院暮しが続いた為かすぐに思い出すことが出来なかったことが恥ずかしい。
「そうだな、帰ったらすぐに尋ねに行こう。ありがとうな奏恵。」
···のだが、
「あなた!前からお爺さんが来てるわ!左に避けて!!」
「父さん、これは"は"で、これが…濁点だから"ば"って読むんだよ!まぁ、ここに書いてあるんだけどねw」
この2人のありがたい(?)助言によって俺はみるみるうちにほぼ通常通り歩けるようになり、点字もあっという間に覚えた。
「高橋さん凄いですね…!!元々点字とか習ってたんですか?」
「いえ、教えてくださる先生方のおかげですよ。」
まさか「幽霊の妻と息子が教えてくれてるんです。」なんて言えないだろう。そんな事を言ってしまったらおそらく直ぐに精神病棟にぶち込まれてしまう。
「でもこの分なら、一週間後には臨時退院出来そうですね。」
「そうですか、それは…良かったです。」
俺の適応の速さに驚きながらも喜ぶ山口さんの言葉に俺は少し複雑な気持ちになった。
帰ったところで、俺は一人だ。
俊介も、奏恵ももうあの家にはいない。
俺が大好きだったはずのあの家は今ではもうまるで幸せの抜け殻のように感じられた。
山口さんの手を(一応)借りて自分の病室に戻り山口さんが部屋から出ていくと、
「あ〜やっと家に帰れるのね。…あの日ちゃんと鍵閉めたかしら!?ちょっと不安になってきちゃったわ!」
と奏恵の声が聞こえた。
「あの日最後に出たのは俺だろ?大丈夫。ちゃんと閉めてきたよ。」
不安なことがあると髪を弄る癖のある奏恵の仕草を思い出しながら、俺は苦笑して答えた。
「全く、母さんは心配性だよなぁ〜」
「だってホントに心配なんだもの!」
そんな2人の言い争いを聴きながら、俺は家に帰ったあとのことを考えた。
(家に帰ったらまず、何をしようか…掃除か?…2人のサポートがあっても一人で出来るか不安だな。それに、はやく2人がどうしてこうなったのかも調べなきゃだな…)
様々なことが脳裏をよぎり、何から手を付けるべきか考えあぐねていると
「父さん、何ごちゃごちゃ考えてんの?」
「…え?」
「父さんが考えてること、全部口に出てたよww」
思わず口元を手で塞ぐ。そんな俺を見て奏恵がひとしきり笑ったあとにこんな提案をしてくれた。
「それなら、お隣の神無木さんに相談してみたらどう?」
神無木さんは神主をしていて、俺たち家族のこともよく気にかけてくれていた優しいおじさんだ。病院暮しが続いた為かすぐに思い出すことが出来なかったことが恥ずかしい。
「そうだな、帰ったらすぐに尋ねに行こう。ありがとうな奏恵。」