官吏セルゲイ・セルゲイヴィチ
聖ペテロ降誕祭の夜
 数あるスロベニアのお祭りのなかでも聖ペテロ降誕祭の退屈さは抜きんでていた。その期間中は飲酒してはいけない。動物の肉を食べてはいけない。料理の甘い味つけは御法度、辛いのもまたしかり。男女が同じテーブルについてはいけない。金属の食器を用いてはならない、などなど。いちばん耐えがたいものは、聖ペテロに扮した—といっても浮浪者であった晩年の彼を模した、悪臭を放つボロきれをまとっただけの—祖父に手づかみで麦飯を食わせねばならぬ、という儀礼で、一族がかわりばんこでピョートル爺さんの入れ歯を外した口に麦飯をつめこんでいくなか、早々に事を済ませた官吏セルゲイ・セルゲイヴィチは酢漬けの棒ニシンを皿から無造作に二、三本とると、いたたまれない気持ちで家の外に出た。
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