貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
クスクスと緑子が笑う。

「それはそうかもしれないけど」

「弘徽殿の女御さまの弟君が頭中将だったらよかったのに」
そう言って花菜は頬を膨らませた。

「今日ね、頭中将とすれ違ったのよ。彼は扇を落とした女官に拾って差し上げていたわ。月君は絶対にそんなことをしないわね」

「そうでしょうね、月君はそんな気安いことはなさらないわね」

「でしょう? そういうツンと澄ましたところが、ほんと嫌」

「贅沢言わないの。でも案外ふたりは合うかもしれないわよ?」

「え? どういうこと?」

「碧の月君と花菜、ふたりの間に恋が芽生えても、ちっともおかしくない、ということよ」

緑子がにやにやと意味ありげに目を細める。

「ないない、あるわけないじゃない。そんな話を聞いたら、それこそ月君が怒り狂うわよ。すごいんだから」

指を角に見立てて花菜が鬼の真似をする。

クックと笑いながら、それでも緑子は、もしかするかもよ?と胸の内で思った。
――嫌いきらいも好きのうちってね。うふふ。

「それにしても、今夜も冷えそうね」と言いながら、花菜がクシュンとくしゃみをした。

「ほらほら、今頃、花菜の噂をしているのかも?」

「やだもぉ」
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