貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
「だから、どういうところが? 御簾から転げ出た話なら、あれは中の女官たちに押し出されたのだから仕方ないだろう?」

月君はふん、と鼻を鳴らす。

「縫司では、女官たちともうまくやっているようだし、裁縫の腕もいい。弘徽殿の女御だって彼女を評価しているというじゃないか」

憮然としたまま立ち上がった月君は、「とにかく、気に入らない」
そう言い捨てながら、衣を翻して行ってしまった。

「まったく。しょうがないな」

あまりの剣幕に、頭中将が首を傾げる。

こう言ってはなんだが、たかが女官ひとりのことである。
接点も無いに等しいはずなのに何を怒っているのか、頭中将には皆目見当がつかなった。

「で、今日は何があったんだ?」

「碧月が女御に持っていく菓子を、女御は全て花菜にあげてしまうらしい。女御は花菜の裁縫をとても気に入っているらしくてな」

「まさか、え? それが気に入らないって?」

返事の代わりに、李悠は肩をすくめる。
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