貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
彼らが下に置いた二つの籠に目を留めた。
どちらもキノコや木の実が、これでもかと山盛りに詰まっている。

その籠に呆れたのか、
それとも棒切れや石を手にやる気満々で熊と向き合っていたふたりが面白かったのか、男は、フッと笑った。

と言っても本当に笑ったのかはわからない。

口元を黒い布で覆っているので、男の目元しか見えない。

「あの。せめてものお礼にどうぞ」

とにかく何でもいいから礼がしたいと思った花菜は、おにぎりの包みと麦茶の入った竹筒を差し出した。

「屯食ですが」

男は無言のままそれを受け取ると、何を思ったのか、手にしている弓を花菜に向けた。
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