貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
「え! そ、そうです。あの時の黒装束の人が実はお忍びの李悠さまだったんですよ! でも、どうしてわかったのですか?」

「彼には時々そんな身なりをして出歩く癖がある。それにあの話をする時、姫は恋をしているようにみえた」
そう言って、蒼絃はフッと微笑んだ。

――すごいわ、なんでもご存知なのね!
感動とともに瞳を輝かせて、花菜はにじり寄る。

「教えてください蒼絃さま、李悠さまはどんな方なのですか?」

何しろ花菜は、彼のことをよく知らない。
知っているのは、カイである時と、よく聞く噂だけだ。
どんな些細なことでもいいから、彼のことを教えてほしかった。

蒼絃はゆっくりと頷いた。

「彼がまだ幼い親王だった頃、行き倒れになった親子を見かけたそうだ。それが重い傷となって心に残ったのだろう」

花菜にもそんな経験がある。
遠くで見かけた禍々しい何か。
嗣爺に、決して近づいてはなりませんときつく言われたが、恐怖で足がすくみ動けなかった。食べ物が無くなってくると、自分もあんな風になってしまうのかと恐れおののいたものである。
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