貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
削ぎ落とされた端正な横顔。物憂げな切れ長の目に薄い色の瞳。人間離れしたその妖艶さが特異な雰囲気を醸し出し、彼をこの都で唯一無二の存在にしているのだった。

「舎人であるのに、人々の前で酔った上になんたる醜態。今頃、随身が橘家にも報告しているだろう。職を失う覚悟もしておいたほうがいい」

「えっ! そ、それはどうかご勘弁を」

橘家の者共は、蒼絃にうながされるまま花菜と小鞠に平謝りをして、スゴスゴとその場を離れた。

蒼絃が小鞠に手を差し出す。

「小鞠、荷物を出して。持ってあげるから。邸まで一緒に歩こう」

「いえ、私は大丈夫です」

遠慮する小鞠の荷物を取り、更に花菜の荷物も手にして蒼絃は歩きはじめた。

線は細いように見えるのに、彼が持つととても荷物が軽そうに見える。
まるで中身が空の荷物を持っているようだ。

彼が男性だからなのか、陰陽師の術なのかはわからないが、花菜はしみじみと感心した。

「ありがとうございます」
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