貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

「そのくらいにしておいたらどうだ」

「あっ、あなたは」

この都では陰陽師藤原蒼絃を知らない者はいない。
いたとすればそれは地方から来た者に間違いない、というほどの有名人物である。

取り囲む庶民ですら「蒼の陰陽師さまだ」と口々に囁いている。

名前しか知らず彼を初めて初見た者ですら、噂どおりの見た目ですぐにわかる。
髪を結うことなくまっすぐに下ろし、その名の通り必ず青草のような色の単衣を中に着ている。

それだけでも彼だと見分けられるだろうが、なによりも際立っているのは、神憑っているその風貌だった。

民衆の中には、彼に手を合わせて拝む者までいた。
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