わたし竜王の番(つがい)です  ~気が付けば竜の国~
焼けつくような胸の痛みを抱えてごろんっと寝返りを打つと、1メートルくらい先にハーピアの花よりももっと濃い色をした球体のもふもふとしたものがあるのが目に入った。

なんだろう、あれ。
10センチくらいのレモンイエローのもふもふ。

ずずっと這うようにして近付きもふもふをきゅっとつかんだ。

「ぎゃぴぃ」

猫を踏んづけたよりも可哀想な悲鳴が上がり「ひゃあ」と私も驚いて飛び上がった。

「楓さま!」私の声にリクハルドさんが駆け寄ってくる。

私の右手には球体のものではなく黄色のもふもふとしたひよこのようなものが握られていた。
どうやら身体を丸めて休んでいたところを私につかまれてしまったようで、頭を持ち上げたひよこらしきものも驚いて目を丸くしている。

「楓さま、一体何を掴んでおられますか」

「えーっと、ひよこ?かしら」

慌てて手を離し「ごめんね、びっくりさせて」とひよこに謝った。

きゅっきゅっとひよこが声を出して起き上がるとなぜか私にすり寄ってくる。

「あら、眠りを邪魔されたこと怒ってないの?」

きゅいきゅいと鳴きながら膝によじ登ってくるとそのまま膝で丸くなり目を閉じてあっという間に寝てしまった。

まあ。
人懐っこいというか、こんなに警戒心がなくて大丈夫なんだろうか。

「この子は何という種類のひよこちゃんなの?」

膝に乗っている見たことのない鳥類(?)を眺めながらリクハルドさんに聞いてみる。

「さぁ、私にも見たことがないのでわかりませんが」
リクハルドさんが首を振る。

「鳥のように見えますが、竜の国に野生の鳥は生息しておりません」

あれ?鳥はいないの?

「ずいぶん人懐っこい子だし、どなたかのペットなのかしら」

「聞いたことはありませんが、そうかもしれませんね」

私の膝の上でごろんと寝返りを打ったひよこはのびのびと身体を伸ばし始める。

「少なくとも宮殿で生き物を飼育するような者はおりませんが・・・さてどこからか逃げてきたのか」

それにしても、ずいぶんと警戒心がない子だ。
試しにつんつんと胸元をつついてみたけれど、何の反応もなかった。

私の膝の上でお腹を出して眠る不思議なひよこにリクハルドと二人で首をかしげた。

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