紫陽花のブーケ

あいつめ!当たらずとも遠からずなのがムカつく!!
仕事中なのにテンション下がるじゃん…

秋元課長とそういう仲になったものの、
その後一気に忙しくなって、デートするどころか
二人でお茶する時間もない

いや、会社では会ってる
でも私たちは二人とも仕事バカなのか、今までが今までだったせいか、
甘~い雰囲気には決してならない

オフィスラブと言えるような欠片もない

しようとも思わないけど!


会社では今までと変わらないけど、帰宅後はひとつだけ変わったことがある

毎晩決まった時間に、秋元さんから電話がかかってくるようになった

秋元さんはとってもマメな人だった

電話の最後に必ずくれるメッセージがある

『愛してる。おやすみ』

秋元さんは吐息混じりにボソッと話すから
私は電話を耳に押し当てて聞くようにする
そうすると、
まるで直接耳元へ囁かれているみたいで……

―――首筋がゾクゾクとして、胸がギューッと引き絞られるよう
初めて聞いた時は、心臓、止まるかと思った……

今は付き合いだしてほぼ一ヶ月、やっと『私も』くらいは返せるようになった
相変わらず心臓は大変なことになってるけどね


そして会社に来ると、いつも通りの鬼課長様がご降臨されているから
私もすぐに頭を切り替えざるを得ない
……前夜のことは願望が見せる夢か幻かと疑うくらいいつも通りだもの

そんな日々が一週間も続いて、やっぱり夢かなと思い始めた頃、
電話ができない代わりにメールで同じメッセージがきた

次の日のお昼休みに見返して、やっと実感したのだ

―――私、秋元課長と付き合ってるんだ~

……まあ、それ見てニヤニヤしてたせいで、高杉にバレたんだけどね

別に隠すつもりもなかったけど
毎日毎日愚痴るほど、奴の課長への憧れは熱かった
まさかこれほどとは思わなかった

正直ウザイ!

それに最近忙しすぎて体も本調子じゃないし

『同期に負けたくないと望むから鍛えた』という彼の誤解は解けたはず

なのに相変わらずのブラックマネージメントはどういうことなのだろうか?

2月の棚卸期に重なった突発のクレーム、
それらの処理を終えたら決算月で、すぐ春の新商品合戦も始まった
だから忙しいのはしょうがないんだけど、さ


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