闇の果ては光となりて
「はぁ···おい酔っ払い。あれはウサギのヌイグルミじゃねぇ」
霧生は大袈裟なぐらいの溜め息をつく。
「···じゃあ、クマでいい」
身体を反転させ、再び総長に抱きつこうとしたら、霧生が立ちはだかり邪魔をする。
「総長はクマじゃねぇ。抱き着くなら俺にしとけ。お前は俺の子猫だろうが」
何を偉そうに言ってるんだか。 
彼女持ちのくせして。
「霧生はダメ。彼女が居る人はパス!」
両手をクロスさせバッテンして見せる。
「···チッ」
睨みつけても怖くなんてないもんね〜。

「霧生、お前の負けだ。今日の所は俺に預けとけ。神楽、部屋に戻るぞ」
総長は意味有り気な視線を霧生に向けた後、私に向かって手を差し伸べた。
「わ〜い、総長」
首根っこを掴む霧生の手が緩んだのを見逃さずに、総長に抱き着いた。
そしたら、何故か縦抱きされた。
私、子供じゃないんですけど。

「おい、神楽はどれぐらい飲んだ?」
私にでは無く、ウサギの男の子に聞いた総長。
「い、一本だけです」
震えながらもそう答えた男の子は、やっぱり可愛らしくて、思わず頬が緩んだ。
今度、ナデナデさてもらお。

「はぁ···缶酎ハイ一本でこれかよ。神楽は飲酒禁止な」
「お酒は飲んでないよ···フフフ、変なの」
小首を傾け、総長を見つめる。
総長、意味分かんないね。
でも、総長って近くで見ても、やっぱイケメンだよね。
お肌ツルツルしてそうだ。
「総長ってイッケメーン···お肌もツルツル」
何故か宣言したくなったんだよね。
「はぁ···ちょっと大人しくしてろ、な。で、光は? どれぐらい飲んだ」
毒気を抜かれた顔で溜め息をついた総長は、私達を笑って見ていたコウに問い掛けた。
「コウは多分2本ぐらいだな」
「お前、分かってて止めなかっただろうが」
「まさか、アルコール度数4%を1、2本飲んだぐらいでこうなるとは思ってなかったんだよ」
コウは後頭部をかきながら肩を竦めた。

「光の面倒は責任持ってみろよ」
「わ〜ってるって。そいつ、どうすんの?」
「部屋に連れて行く」
「そっか。出来れば怒らないでやってくれよ」
「別にこの程度で怒らねぇよ」
「ならいい」
総長とコウの会話をぼんやり聞いてると、眠気が襲ってきた。
持ち上げようとしても瞼が下がってくる。
ゆらゆらと揺れる感覚に身を委ねていたら、総長の私を抱く手に力が籠もった。

「おい、俺の首にしっかり掴まってろ。部屋に連れて行ってやるから」
「うん。大好き総長」
ギューッと抱き着いたら、周囲がざわめいた。
そして、霧生の方からはただならぬ気配が漂ってくる。
まぁ。いっか···ニヘラと笑って総長にしっかりと抱き着き私はゆっくりと目を閉じた。
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