相思相愛ですがなにか?
「月子さん、そんなにぼうっとしていて大丈夫かしら?」
自己嫌悪のループに陥っていた私は、お義母様――伊織さんのお母様の仁恵様の声で今の自分の状況を思い出した。
和服に身を包み、藤堂家のお屋敷の西側にある和室で花嫁修業の一環として華道の手ほどきを受けている最中だった私は、サッと頭を切り替え仁恵様に微笑んだ。
「大丈夫ですわ。お義母様」
私はそう言うと、一輪の竜胆を手に取りパチリと鋏で茎を切って剣山に生けた。
ぼうっとしている間にも問題なく手は動いていたようで、間もなく作品が出来上がった。
「いかがでしょうか?」
花器をくるりと回転させ、仁恵様に出来上がった作品を見せる。
「あら……まあ……」
夏を旬とする竜胆を中心に据え、小ぶりの向日葵をアクセントとして配置したことにより、緑が一層引き立つ作品になったと自負している。
伊織さんのような落ち着きのあるイメージとした色調に仕上がった作品には仁恵様も唸るばかりだった。
「月子さんって本当に何でもできるのね」
仁恵様はしみじみと感心したように私を褒め称えるのだった。