相思相愛ですがなにか?

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(なんで寝ちゃったのよお……)

私は朝から何度となく同じ問答を頭の中で繰り返していた。

藤堂家の使用人達の手が行き届いたお布団が気持ちよすぎて、寝たふりをするつもりが、本当に二度寝をしてしまった。

気が付いた時には、お日様が天高く地面を照らしており、伊織さんはお仕事に出かけていたあとで愕然とした。

おはようのキスどころか、いってらっしゃいのハグもできやしなかった。

(今日で最後だったのに……)

本日、10日に渡る配管工事が無事に終了し、私は当初の予定通りゲストルームに移ることになっていた。

次に伊織さんと褥を共にするのは結婚式の後である。

(ああっ!!)

予定では今頃ふたりは魂のパートーナーとして互いを愛し合っているはずだったのに。

蓋を開けてみたらどうだ?

既成事実を作るという目的は達成できず、最後の最後まで伊織さんの身持ちの固さに阻まれ、枕を並べて添い寝が精々だった。

唯一の救いといえば、携帯、脳内問わず伊織さんの隠し撮りが充実したことぐらいか。

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