相思相愛ですがなにか?
「よう。待たせたな」
結局、冬季緒がやってきたのは待ち合わせの時刻から30分も過ぎた頃だった。
遅刻してきたというのに、悪びれもせず冬季緒は俺の顔を見るなり、からかうように尋ねた。
「どうした?やつれた顔して」
「父さんが日替わりでお見合いを組んできて……疲れてるんだよ」
そう答えると、冬季緒はニタニタと面白がるような笑みを浮かべて首をすくめた。
「それはご愁傷さまだったな」
「うるさい」
皮肉を効かせた言い方に腹が立ち、思わず冬季緒の頭を小突いた。
藤堂グループの宗家出身の俺と、南城財閥の御曹司である冬季緒は学生時代からの付き合いで、互いに立場や家柄を気にすることなく気兼ねなく話ができる唯一の友人と言っても過言ではない。
歯に衣着せぬ物言いしかせず腹芸のできない性格の冬季緒に振り回されることもしばしばだが、今でもこうして付き合いが続いているということは、俺もなんだかんだ冬季緒の扱い方を心得ているということか。