相思相愛ですがなにか?
「席はこちらです。ショーが一番良く見える前から2列目を確保しておきました」
「助かります。わざわざありがとうございます」
月子ちゃんを見られるのなら、立ち見でも構わなかったのに、特等席を用意してもらった心遣いに感謝を述べる。
これほどショーが盛況ならば、俺のような部外者が立ち入る余地などなかっただろうに、陣内社長は俺のために格別の配慮をしてくれたらしい。
「いいえ。先に無理を言ったのはこちらですから」
礼は不要とばかりに陣内社長は首を振ると、今度は俺の顔をじいっと眺め始めた。
「なにか?」
新人モデルの品評会でもしているのかとばかりに、真剣な表情でマジマジと顔を見られていては、俺だって落ち着かない気分になる。
「おほほ。月子から聞いていた通りの素敵なお顔立ちだったものですから」
陣内社長はそう言ってにんまりと笑うと、先頭に立ち俺を特等席まで案内し始めた。
(素敵なお顔立ちって……)
月子ちゃんは俺のことを何て話しているのか気になったが、わざわざ聞くような無粋な真似はしない。
しかし、褒められて悪い気はしないのは確かだった。