相思相愛ですがなにか?
「まどろっこしいな。さっさと行けよ」
お兄ちゃんは私を思い切り足蹴にし、伊織さんとあの女性の前へ突き飛ばしたのだ。
「ちょっ!?何するのよ!?」
自慢の桃尻に靴跡をつけられ、私はすぐさまお兄ちゃんを非難した。
スーパーモデルの私を容赦なく足蹴にするのは世界広しといえども、うちのお兄ちゃんくらいのものだ。
「月子ちゃん!?」
「冬季緒くん……!?」
突然、床を転がってきた私を見て、二人は同時にカウンターの座席から立ち上がった。
蹴られた拍子に膝を擦りむいた私は伊織さんとあのナンパ女の前でなんとも、まあ無様な姿を晒すことになったのである。
「大丈夫……?」
「い、伊織さーん!!」
私は蹴られたお尻をさすりお兄ちゃんの悪魔の所業を目で訴えながら、伊織さんに助け起こしてもらったのだった。
その背後では、もうひとつの戦いが既に始まっていた。
伊織さんとお酒を飲んでいた女性はすっころんでいた私を素通りすると、お兄ちゃんにすかさず詰め寄っていた。