相思相愛ですがなにか?

私は周囲の人へ威嚇のようにカツカツとハイヒールをかき鳴らし、アスキムに近づくと、彼の前で腕を組み、仁王立ちで言い放った。

「あのねえ、アスキム!!来るならもっと早く連絡を頂戴!!」

友人とは言え王族にこんな口をきいたら、即刻鞭打ちの刑にでもされそうだけど、アスキムにはさして気にした様子はない。

英国留学時代から、私達の間に身分の違いによる遠慮があったことは一度としてない。

「そう邪険にするなよ。例の物も一緒に連れてきたんだ」

例の物と聞いて、ピンとくる。

「カリウスから連れてきた二頭は指定された牧場に送り届けてもらうことになっている」

そう、例の物とはお兄ちゃんに献上するラクダのことである。

私はお兄ちゃんを味方にするためのラクダの手配を他ならぬアスキムに頼んでいたのだった。

「あら、そう……。ありがとう。助かったわ」

さすが、アスキム。

女性を手玉に取ることだけでなく、その怒りの収め方も上手かった。

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