相思相愛ですがなにか?
伊織さんが出て行ってからしばらくは大人しくしていたが、バルコニーへと続く出窓から階下のパーティー会場の喧騒がわずかに聞こえてきて、誘われるようにバルコニーへと降り立つ。
バルコニーからはパーティー会場となっている庭園が一望できた。
昼過ぎから始まった婚約パーティーは、日が落ちた後はホールへと場所を移し夜会へと変貌する。
(……主役が不在でも、宴は続くのね)
バルコニーには気持ちの良い風が吹いていて、主役だからと気を張っていた私を癒してくれた。
不特定多数の人がいるパーティーは苦手だ。
……常に誰かに値踏みされている気がするから。
私は伊織さんが戻ってこないことをいいことに、スパンコールがちりばめられたハイヒールのパンプスを思い切って脱いでしまった。
(ああ!!疲れた!!)
ショーや撮影でハイヒールを履くことには慣れていたが、パーティーの間中、休憩なしでずっと立ちっぱなしというのは結構辛かった。