極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
予想外のことを言われ、目をまたたかせる。
(書斎で? ……別々に寝るの?)
たしかに書斎にもベッドは用意してあると聞いている。
でもそれは、立て込んだ仕事を自宅に持ち帰ったときに便利だからだと。寝室で先に眠っている陽奈子を起こしたくないという、貴行の配慮だったはず。
初夜で交わされる行為は、誰にでも訪れる絶対的なものだと思っていた。
身体が結ばれれば貴行と近づけるかもしれないと期待していただけに、ショックを隠し切れない。
「もしかして俺を待ってたか?」
意地悪な目が陽奈子の顔を覗き込む。
「ま、まさか……! 待ってなんていませんからっ」
眉間に皺をたっぷり寄せて抗議する。
貴行の目がどことなく悲しげに見えたのは、陽奈子の願望が見せる幻覚に違いない。