極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

どちらかと言えば、幼い頃から堅実な道を歩いてきた。

三つ歳の離れた姉、萌々(もも)は奔放で自由を謳歌するタイプ。両親に心配をかけるのが常の萌々をそばで見ていたからか、陽奈子は枠からはみだすのが怖く、当たり障りのない道を選ぶことが多い。

そんな自分が海外に、それもひとりでやって来るとは正直今でも信じられない。

それは両親も姉の萌々も同じだったようで、発つ日の朝まで『本当に大丈夫なの?』としつこく念押しされた。

それでもこうして来たのはやはり、憧れの地に行けるチャンスはそうそうないと思ったから。


「貴行さんはここに住んでいるんですか?」


慣れた様子が観光客とは少し違って見える。


「いや、仕事で」


今朝、待ち合わせしていると言っていた相手も仕事関係なのかもしれない。
仕事でこんな素敵なところへ来られるのは羨ましい限りだ。

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