極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
目の前に並んだおいしそうな料理を見れば無理もない。バレッタの街を一日歩き回り、お腹もぺこぺこだ。空腹にはかなわない。
陽奈子が食事に了承したとわかった貴行は、満足そうにニッと唇の端を上げた。
(なんだかちょっぴり変な人だけど、せっかくだからごちそうになっちゃおう)
陽奈子は「いただきます」とフォークを取り、牛肉のシェリーに煮込みに手を伸ばした。
「マルタ島へは観光で?」
料理を食べ進めながら、ふと質問を投げかけられる。
「はい。休みがとれたので思いきってひとりで」
「ひとりで旅行するくらいだから、旅慣れしてるんだな」
「あ、いえ。実は初めてのひとり旅だし、初の海外旅行なんです」
陽奈子がそう答えると、貴行は目を丸くした。
「ずいぶん思いきりがいいんだな」
「自分でもびっくりです」