極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

まじまじと見つめられて顔を勢いよく遠ざけたけれど、背もたれのないシートから落ちそうになり、ここでもまた貴行に肩を引き寄せられた。

ドクンと弾む鼓動。顔はカーッと熱くなった。


「なにやってんだよ。危ないだろ」
「……ごめんなさい」


なにを動揺しているのかと自分でも思う。


「それで、陽奈子は自分の顔のどこが気に入らないんだ」
「全部です」
「全部? ずいぶんと自己否定が激しいな」


貴行がハハッと笑い飛ばす。

――自己否定。その通りかもしれない。
陽奈子という人間の、まさに〝顔〟である部分が嫌いなのだから。


「男の人を誘っているように見える顔だそうです」
「男を誘ってる顔? つまり、男好きのする顔ってことか?」


コクンと小さくうなずく。

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