恋のレッスンは甘い手ほどき


片づけを済ませ、いつものように簡単に明日の朝食の準備だけしてからお風呂を済ませる。
そして、さて寝ようと家の中を消灯していくと、貴也さんの部屋から明かりが漏れていることに気が付いた。
お風呂を済ませた後、寝たかと思ったがやはりまだ仕事をしているのだろうか。
そんなのでは治るものも治らない。
最後の忠告だと部屋をノックすると、案の定「はい」と返事があった。ドアを開けるとベッドに入りながら資料と本を読んでいる。
ドアの隙間から顔だけをだして部屋の中を覗き込んだ。

「もう遅いですよ」

私の言いたいことに気が付くと苦笑した。そして手元の資料をベッドサイドに置いて、消灯する。

「そうだな。寝るか」
「そうしてください。おやすみなさい」
「おやすみ」

挨拶をして部屋を出ようとすると、「鈴音」と呼び止められた。
ちょっとと手招きをされ、何だろうとベッド脇まで近寄ると、急に手首を掴まれ強引にグイッと引っ張られる。体勢を崩してそのまま貴也さんのいるベッドに崩れ落ちた。

「きゃあ! た、貴也さん!」

抗議の声を上げるが無視をされ、布団の中に引きずり込まれてしまった。
あっという間のことで訳が分からず唖然とするが、すぐに状況を飲み込み非難した。

「何するんですか! 練習ならもう明日にしてください!」
「何もしないし、練習でもないよ」
「ハァ!? 説得力ないし!」

焦りの声を出す私とは反対に落ち着いた声で、私を後ろから抱きしめるように腕を絡ませる。
布団の中のぬくもりと貴也さんの匂い、そしてなにより首筋にかかる吐息と背中に触れる貴也さんの熱に自分でもわかるくらいに顔が熱い。
心臓が口から飛び出しそうだ。
こんなの私にとってはトキメキの練習ではなく殺人行為に近いくらい破壊力がある。こんなのは練習でもなんでもない。

「契約違反です!」

身じろぎをしようとするが、胸の前で組んだ手を、後ろから貴也さんの手が抑え込むように両手で包み込む。ますます身体が密着して心臓が苦しい。
しかし、貴也さんは穏やかな声で言った。



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