悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
「……いいわね。その役目、私マリア・ヘインズに任せてくれない?」
「「え?」」
ジェナジェマは同じ顔で、同じ声で、同じタイミングで私を見る。
「私実はさっきリリーと会って仲良くなったのよ。リリーはそんな私のこと警戒しないだろうし、仲良しの振りをして私がリリーをいじめて精神的に追い詰めるわ」
「……そんなことできるんですの?」
「逆に二人にできる? バレた時のリスクは大きい。下手するとお城――いや、国外追放よ!」
「「うっ」」
二人はそんな最悪の事態を想像したのか、手を取り合って仲良く一歩後ずさる。
「でっ、でもそんなことしたらー、マリアだって危ないんじゃ……っ!」
「私はいいのよ。花嫁なんて狙ってないし」
私は二人の間に割って入り、ガシッと両手でジェナジェマの肩を掴むと自分の方へと引き寄せた。
ああ、両手に花! ジェナもジェマもいい匂い! リリーもだけど、どうして可愛い子ってのはこんなにいい匂いがするんだろう。
すぅーっとゆっくり深呼吸をし、私は困惑してる二人と交互に目を合わせると、すぐ先にある大広間へ続く扉を見据える。
「私に任せて。その間に他のみんなは王子にアタックすればいいわ」
「……マリア、貴女ってば悪女ですわね。フフ」
「頼もしいーっ! ジェマワクワクしてきちゃった!」
うまく言いくるめた。リリーをいじめる役を担って、男に嫌われ女からの好感度は上げる完璧な作戦。
「よし、じゃあ二人共行くわよ! まずは――」
ディナー会へ!
私は今から始まるパーティー開幕に胸を躍らせながら、目の前の大きなドアを開いた。
――待っててリリー。私は私のやり方であなたをいじめて……守るから。