悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
……意外な質問に私は少し驚く。
ジェナはマリアの取り巻きはしてたものの頭が良さそうで、一番悪い役目をマリアに押し付け自分がよければそれでいいような人だと勝手に思っていたし、実際そんなキャラだった気もする。
ジェマはそもそも姉のジェナを慕っているだけで根は悪い子じゃなさそうだし――頭は悪そうだけど。
だからジェナがまさか私を心配するような言葉をかけてくることは、私にとっては予想外なことだった。
「……二人は私のことをどう思うの?」
私がそう聞くと二人は即答する。
「マリアはかっこいいですわ」
「マリアはかっこいいよ!」
「うん! 私はそれでいいの!」
二人は不思議そうに首を傾けるが、今の言葉が聞けただけで私は満足だ。
悪意のない純粋な好意を向けてくれる女の子からの視線もまた新鮮。
本来のマリアは姑息な手を使いリリーを追い詰め男からだけ好意を得ようとして失敗しているが、私が好意を得ようとしているのは女だけだ。
だから絶対失敗なんかしない。
その後大浴場とは全く逆に進んでいることを二人に指摘され、結局大浴場まで連れて行ってもらった。
****
広々としたお風呂を満喫し、部屋のドレッサーで髪も身なりもきちんと整え直す。
ランチの時間になったので昨日のディナー会と同じ場所へ向かった私に、まさかの事態が待ち受けていた。
「お前は昨日問題を起こしたペナルティで今日この時間出入り禁止だ」
昨日いた青髪が扉の前で偉そうに立ち塞がり、私に出禁通告をしやがったのだ。
「――それはつまりわざわざここまで来てやったお客様の私がお昼ご飯抜きってこと?」
「さすがにそこまではしない。お前の分は部屋まで使用人が持っていく。しかし既に俺はお前を客と思ってないことだけは覚えておけ」
「お前呼ばわりされてる時点で察してるわよそんなこと」
「そうか。思ったより馬鹿ではないみたいだな」
フッと笑う青髪。馬鹿ではないと言っておきながらその笑い方は完全に人を馬鹿にしている。