悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
いや、もう深く考えるのはやめよう。頭の中がキャパオーバーだ。
自由に生きるって決めたのに、ごちゃごちゃいらないことを気にし出すとまた私の前に仮面が現れ同じことを繰り返す。
死ぬ時に後悔するような生き方は、もう二度としたくない。
私は邪魔な男共に嫌われながら、時間が許す限りリリーとジェナジェマと楽しいお城ライフを過ごすんだ!
――だからその為にも、あの王子とこれ以上関わるのはやめよう。
そう決めたところで部屋に着くと、扉の前に何故かハロルドが立っていた。
……自分の部屋も出禁ってことだろうか。そんなことある?
きょとん顔の私を見るなり、ハロルドは冷たい一言を放つ。
「荷物をまとめて帰れ」
「――は? どうしてよ。あとずっと前から待機してたの? ストーカー? あ、暇なのね」
「うるさい喋るなその減らず口を今すぐ塞げ。……お前は王子の花嫁にふさわしくないと判断した。よってもうここにいる必要はない」
出禁の次は追放か。タバスコこぼしただけで。
せっかく可愛い女の子と仲良くなれたのに、こんな早くにくだらない理由で追放なんてされてたまるか。
王子を手に入れられないマリアはどうせヘインズ家から追放確定なんだから、せめてこの夢のようなパーティーが続いてる間は絶対に帰りたくない。
――ここは女の武器を使うしかないみたいね。
「……そ、そんな……私っ……わざとやったんじゃないのに……そんな言い方……」
私は両手を顔で覆い、悪女になってから一度はやってみたかった嘘泣きを試みた。
男は女の涙に弱い。真莉愛の時だって泣いとけば全部許されてきたし。
「嘘泣きはやめろマリア・ヘインズ」
「――バレた?」
「バレバレだ。見ていて痛々しいくらいにな」
くそう。こいつ女に慣れてなさそうだし泣いておけば慌てるかと思いきや全く通用しないなんて。