悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
「ちょっとマリア! 突然何ですの!?」
「うわぁーん! ジェマ初めて騎士団長様と話せると思ったのにぃーっ!」
「わ、悪かったわ。でもこれでわかったでしょ? 私がハロルドを狙っても仲良くもなく寧ろ嫌われてるってことに」
「「確かに」」

 双子のシンクロスリーコンボが決まったところで、私はこれ以上さっきの会話の内容を追求されないよう飲み物を取って来ると言い二人から離れ単独行動をすることにした。
 リリーに嫌がらせする(フリ)にしてもあの二人がいるとやりづらい。

 今日の食事はバイキング式のようで、高級ホテルのバイキング並みにいろんな料理が好きなだけ食べられるようにたくさん並んでいる。
 全種類食べたいのは山々だけど残念ながらそれが入るだけの胃袋は持ち合わせていないので、本当に食べたいものを吟味していると出来立ての料理を並べに来たノエルと遭遇した。

「あ、ノエル」
「――タバスコ女! お前のせいでタバスコ置くの禁止になったんだぞ! もちろんデスソースもな! 昼間はよくもハロルド様にあんなことを……」
「えータバスコないの? 今日もこのパーティーをタバスコで真っ赤に染めようと企んでたのに」
「いい加減にしろ! 姑息な真似をして王子の気を引こうとしても王子は振り向かないぞ」
「大丈夫。振り向かせたいなんて思ってないから」
「……は? んじゃあ何でこのパーティーに参加してんだよ?」
「うーん。こうやって美味しい料理を堪能する為? あ、ねぇ! あのシュークリーム、私が一つ台無しにしちゃったけどすっごく美味しかった! この会場にはないの?」

 ノエルの顔を見ると、無性にあのシュークリームの味を思い出し恋しくなってきた。
 
「いや、一応あそこにあるけど」

 ノエルが指さす方向にはお茶会で見た種類の倍以上の手作りスイーツが並んでいて、その中にノエルが作ったシュークリームを見つける。
 他のスイーツよりも用意されている数が少ないようだったので、私はなくなる前にシュークリームをお皿の上に取ってからまたノエルの元に戻った。

「――俺みたいな見習いより、もっと一流のシェフが作ったスイーツがあんだからそっち食えばいいのによ」
「いや。私はこれが気に入ったの」

 即答する私にノエルは少し驚いた顔を見せ、料理を並べる手を止め私の方へと向き直す。
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