愛を捧ぐフール【完】
「エヴァンジェリスタ・セウェルス伯爵とクラリーチェ・レオーネ男爵令嬢か……。サヴェリオ、例え二人の結婚が白紙になったとして、クラリーチェ嬢をどうするつもりだ?」

「それは……、彼女が望むままの未来を作ってやるつもりです」


 そうだ。エレオノラの時に出来なかった道を、彼女が幸福に過ごせるためなら。
 彼女の愛する人に頭を下げて、結婚を頼むくらいは容易に出来る。


「恋愛感情はないのにか?」

「ええ。勿論です」


 俺が全く理解できないという風なアルフィオ様は、しばらく難しい顔をして唸っていたが、ポツリと呟いた。


「どうして他人の為にそこまでしようと思うのだ?」

 他人。
 その言葉が思ったよりも響いた。


 今世では他人だが、前世は確かに妹だったのだ。俺にとっては他人ではない。


「他人のように見えますが、俺は彼女の事を妹のように思っています」

「……分からないな。お前ら会ったのは昨日が初めてではないのか?」

「……まあ、一応そうなりますね」
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