愛を捧ぐフール【完】
 ちょっと引いた顔をしたアルフィオ様だったが、深々と溜め息をついて立ち上がった。


「お前は兄上と初対面の時も初対面の者にここまで悪感情を抱けるのかという位、ピリピリと敵意を向けていたが……、今回も含めてたまに不可解な言動を取ることがあるな」

「えっと……、そんなに変でしたでしょうか?」

「変だ。特に兄上関連では」


 断言されて言葉に詰まる。ファウスト殿下に対しては本当に昔の感情を持て余してしまう。
 たまにファウスト殿下に会っても憎しみが襲ってこない事があった時、初めてファウスト殿下の影武者の存在に気付いた。


「まあ、お前がクラリーチェ嬢の結婚を破談にしたいという事に本気だということは分かった」

「はい。それは勿論です」

「破談になった後、行き場の失くしたクラリーチェ嬢を娶るつもりはあるのか?」

「……あります」


 クラリーチェが行き場を失くしたのならば、白い結婚で彼女を俺の庇護下に置くことも出来る。その後で彼女に好きな人が出来たら、可能な限りで相手に頼み送り出せる。


 俺自身、白い結婚で構わない。クラリーチェにそういう感情を抱くことは永遠にないし、子供は親戚から養子を取ればいい。
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