愛を捧ぐフール【完】
 幼馴染みに気にかけられているクラリーチェ嬢は、栗色の毛先の方を緩く巻き、桃色の大きな目をした非常に可愛らしいご令嬢だった。
 あんな肥えた狸に嫁がせるのは勿体無い位の美少女である。


 まあ、レオーネ男爵の愛人の娘だというから仕方ないのかもしれない。


 正妻の娘であれば正式なデビュタントを果たした後、社交界で同世代の若者に見初められて、幸せな結婚をしていたのかもしれないと容易に想像出来る。
 それ程には可愛いらしいと全員が言うだろう。


 エヴァンジェリスタ・セウェルス伯爵とクラリーチェ・レオーネ男爵令嬢の婚約を破棄するのは、至難の業だ。
 セウェルス伯爵とクラリーチェ嬢の父親であるレオーネ男爵の間に何があって、この政略結婚が成立したかが分からない。


 想像出来るとすれば、現在水面下で行われている第一王子派と第二王子派の派閥争い位か……。


 セウェルス伯爵は第一王子派だが、レオーネ男爵は中立派に近い。
 王太子である第一王子に付いたら将来良い方向に繋がると思ってセウェルス伯爵に娘を嫁がせた……という線が、一番有力だろう。
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