愛を捧ぐフール【完】
 腕を組んで口を尖らせるシストにラウルが窘める。僕は苦笑いで答えた。


「実はね、僕は全然王様には向いていないんだ」

「もー、ファウスト殿下いつも言うよねそれ。僕から見たら全然そんな風には見えないけど」

「見えなくても事実なんだよ」

「〝一国を滅亡に導いた王〟なんて、想像つかないよ」

 全く向いていないんだ。
 僕の大事なものの前には、国なんてどうでもよかった。僕の世界に国なんてなかった。


 だから、僕は絶対に諦めない。
 エレオノラを、クラリーチェを。


 彼女が僕を愛してくれている限り、ずっと。
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