愛を捧ぐフール【完】
「クリストフォロス様。仕方がないのです」

「駄目だよ、エレオノラ。駄目だ」


 多分、クリストフォロス様と同じくらい私も怯えていた。いや、平静を装っているつもりだったけれど、失敗しているのかもしれない。


 嫌だった。本当はすごくすごく嫌だった。


 子供の我が儘みたいにずっと事実に目を瞑って、何も無かった振りを出来た方がマシだった。


 それでも私には生まれた時から王国に、国民に、貢献しなければいけない使命がある。それはクリストフォロス様と結婚した今、さらに力強く私を拘束している。


 だから、言わなければならない。
 お互い傷付ける事しか出来ないけれど、義務で言わなければならない言葉を。


「クリストフォロス様、私を離縁して下さいませ」


 クリストフォロス様に向かって頭を少し下げる。
 ポロリといつの間にか浮かんでいた涙が、掛布に落ちた。
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