さぁ、このくそったれな世界にさよならを。
男は常人が飲んだら一瞬で吐き出すほどに甘ったるい最早珈琲と呼べない珈琲を飲みながらパソコンを操作していた。
一ヶ月前。
世間を騒がした連続殺人事件。
犯人である二十三歳の若い女が起こした凄惨な復讐劇。
まるでフィクションの世界のようにリアリティーのないそれは匿名のネットの世界で一種のカルト的な存在となっていた。
世論のほとんどが犯人に同情的だった。
幼少期に父親から虐待を受け、母親には棄てられ、お互いを支えあっていた双子の妹は理不尽な暴力によって奪われた。
警察は双子を助けなかったし、周りの大人達も優しい老夫婦以外は見て見ぬふりを決め込んだ。
たった十三歳にして絶望を味わった幼い少女が十年もの月日をかけて復讐を行ったことを誰が咎められるだろうか。
そんな事件だからこそ誰も気付かない。
悲劇の復讐者に“協力者”がいたことに。
何故、何の力もない無力な女が許しがたい仇を見つけられたのか。
何故、自分よりも力の強い男達を拉致出来たのか。
何故、三人を皆殺しにするまで捕まらなかったのか。
誰も知らない“協力者”が確かに存在していた。
復讐者に情報を与え、場所を貸し、力を貸した“協力者”。
男はまるで宗教団体のように復讐者を神格化するあるサイトを見てにんまりと嗤う。
今度はこれで遊ぼうか。
男は無邪気だった。
悪意がないからこそ何でも出来た。
自分の好奇心を満たすためだけに復讐者に情報を与えた。
それでどこまでするか知りたかったから。
結果は予想の遥か上をいった。
多少力は貸したが、見事に復讐をやり遂げ爪痕を残し、さらには新しい火種も撒いてくれた。
最高の結果だと思った。
男は復讐者を称賛する。
全てを受け入れ、愛し、そして見送った。
新しい興味がわいたからもう必要なかった。
サイトのコミュニティー欄にカーソルを合わせ、クリックする。
さぁ、次の遊びをはじめようか。