アイスクリームと雪景色
厳しい箱崎が、感心の口ぶりで部下の話をするなど珍しかった。少し興奮しているようにも見える。

「それで、金本さんはその応援団で団長を務めていたらしく、幹部のOB会会員でもあるんだが、里村のことを教えてくれたんだよ。あいつも、団長だったんだぞって」

「ええ?」

さすがに声が大きくなり、箱崎の眼鏡越しの瞳を覗き込んでしまった。仕事中と同じ、真剣な色をしている。

「里村は、一見へらへらした軟派野郎だが、なかなかどうして骨のある男だ」

「な、なるほど」

「そんな気骨を微塵も見せず、ちょっとおかしなコネ男くんを演じている。何を考えてるのか分からんが、実に興味深い」

箱崎はコーヒーを飲み干すと、美帆に笑いかけた。壮年らしい魅力に溢れた笑顔であり、ほんの少しだけ見惚れてしまった。

「まあ、いろんな意味で規格外の男だが、成田に育ててもらうなら安心だ。振り回されて大変そうだが、困ったことがあれば俺が相談に乗るから、しっかり仕事を仕込んでくれ」

「ええ、それは、もう」

実際は、箱崎が把握する以上に振り回されているが、それは言わないでおく。この期待に満ちた眼差しを裏切ってはいけないと思った。
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