アイスクリームと雪景色
「それに、何ていうのかな」

「えっ?」

箱崎は休憩室のドアを開けてくれながら、ちらりと美帆を見てから言った。

「あいつが来てから、成田も元気になったみたいだし、俺としては良い相性だと思ってるよ」

「あ……」

部下の言葉を待たず、箱崎はすたすたと歩いて行った。

「箱崎さん」

後輩の意外な一面に驚きつつも、さり気ない優しさで自分を思いやってくれる上司の背中を、美帆は感謝の思いで見つめた。


翌日も翌々日も平和だった。

仕事も順調だし、里村はまじめに働いている。美帆は安定した気分で週末を迎えていた。

「さて、帰ろうかな……ん?」

ふと気がつくと、里村が席にいない。いつもなら美帆の仕事が終わる頃になると、帰路をともにするため自席でスタンバイしているのに。

「トイレかしら」

バッグを持つと、とりあえず帰り支度をするため、更衣室に移動した。

美帆は、相変わらず一緒に帰りたがる里村を歓迎するわけではないが、突き放すことはしない。並んで歩けば確かに目立つけれど、周囲が注目するのは彼だけで、美帆ではないと分かったから。

「それに……」

新しく買った靴を見下ろした。
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