アイスクリームと雪景色
「さて、突然のことで申し訳ないんだが……と、少し待ってくれよ」

廊下で向き合うと、金本課長は早速用件を切り出そうとするが、ポケットを探り始めた。

(立ち話で済むことだろうか)

美帆は不安になってきた。こんな風に個別に呼び出されるなんていい話とは思えない。

もしかして――

リストラされる社員は個別に呼び出され、こんな風に、立ち話的なさり気なさで選択を迫られると聞いている。選択というより宣告かもしれない。

我が社における総務課は、人事と密接な関係にある。

(もしかして里村くんのことで……人事のほうから)

最近変わったことと言えば、里村宏道の教育係になったことくらいだ。仕事はこれまでどおり順調だし、他に思い当たることはない。

それに、さっきから里村の姿が見えないことが引っ掛かっている。

(もしや、私に振られたことを根に持って、役員に言いつけたとか)

里村は創業者の曾孫で、現会長の大甥にあたるコネ男くんだ。役員にも親類縁者がいる。

閻魔大王のような総務課長を前に、美帆は怖がりながらも冷静さを保った。
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