アイスクリームと雪景色
(その上、仕事も真面目に取り組んでたっけ)

窓の曇りの隙間から外を眺める。

広がる畑に、小山に、雪が降っている。美帆は膝にかけていたコートを羽織ると、寒々とした冬景色に目を細めた。

故郷の空を覆う鉛色。それは冬独特の暗色だった。

美帆は今、教育係として、先輩として、張り切って里村を指導している。それは充実した毎日であり、彼の呑み込みの早さが、さらにやりがいを与えてくれる。

里村は優秀な新人だと、周りが認め始めていた。

会議中も、以前のようにへらっとした態度を取らず、真剣な顔で参加している。この間まで、“ちょっとおかしなコネ男くん”を演じていたのに、ずいぶんな変わりようだ。
 
だが、里村は里村である。

『ついに本気モードか』『心境の変化でもあった?』と、先輩らにからかわれると、たちまち相好を崩し、こう答えるのだ。

『ハイッ! 社員旅行が楽しみで、頑張ってます!!』

顔を見合わせる皆の後ろで、美帆はひやひやしている。

そして全力で願う。

『どうしてそんなに楽しみなんだ』と、誰も追及しませんように、と。
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