アイスクリームと雪景色
浮かれた里村が、『成田先輩と、イブに温泉旅行ですからッ!』などと、うっかり口走ったら困る。後輩の評価が上がるのは嬉しいが、恋愛沙汰で目立つのは勘弁してほしい。

恋愛だけは、まったく、本当に、計画的にいかないと骨身に沁みていた。もう振り回されるのはごめんである。

ハイテンションの里村には悪いが、イブだろうが旅行だろうが関係なく、仕事に集中したいというのが美帆の本音だった。 

乗客もまばらな私鉄電車の車両に、次の駅到着のアナウンスが流れる。

電車はスピードを落とし、ゆっくりとレールを滑っていく。美帆はバッグを肩に立ち上がると、降車口に向かった。


静かな駅に降り立ち、白い息を吐く。

半年ぶりの故郷。

美帆はコートの襟を合わせると、うっすらと雪が積もるホームを歩き出した。
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