アイスクリームと雪景色
今年のお盆に帰省したが、ご先祖のお墓参りの後は疲労を理由に本家の食事会をパスし、翌朝一番の電車で東京に戻ってしまった。

仕事が忙しいのもあるが、親戚に囲まれて結婚がどうのこうのとせっつかれるのは鬱陶しい。

『美帆ちゃんも30になるのねえ』

『男並みに稼いでるんだって? 嫁の貰い手がなくなるぞ』

『親孝行しなさいよ』

酒の肴に繰り返される小言が予測できた。

だけどあの頃は、坂崎とのゴールインも間近だと美帆は確信していた。それを報告すればよかったのだが、根掘り葉掘り訊かれたくなかった。

坂崎のことを話さなくて正解だったと、心から安堵する。

半年後には駄目になったなんて、そんな恥ずかしいことが親戚じゅうに知れ渡ったら大変だ。ますます肩身が狭くなる。

(けっこん……か)

改札を出ると駅前通りの横断歩道を渡り、コンビニと雑居ビルの間を抜ける幅の狭い道を進んだ。ゆるやかな坂道を上ると、川沿いの道に出る。上流に向かって5分も歩けば、実家に到着だ。
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