アイスクリームと雪景色
「なんですか? 成田先輩」

嬉しそうにそわそわする彼に、人差し指を唇に当てて「静かに」と合図する。

最近は仕事ぶりもまじめだし、落ち着いてきたが、こんなところは相変わらずだ。美帆が少しでも好意的に接すると、異様に喜んでしまう。

その様子は、尻尾をちぎれんばかりに振り、飼い主にじゃれつく仔犬である。

(ふう、まったくもう……)

仔犬というより、里村は大型犬である。ちょっとした動きが思わぬほど目立つし、声もやたらと大きい。

美帆は彼をなだめながら、前方に立つ社長に視線を戻した。


「ねえねえ、先輩。さっきの何だったんですか?」

朝礼が終わると、里村が早速追及してきた。美帆は「何でもない」と繰り返すが、彼は納得しない。つい微笑みかけてしまった自分を反省しつつ、美帆は話を変えた。

「それにしても、最近は社長のスピーチばかりね。外山会長はお忙しいのかしら」
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